近年、さまざまなクラウドサービスやリモートワーク等の普及に伴い、自社保有のサーバー(オンプレミス)からクラウド環境へと社内システムを移行する企業が増えてきています。
クラウドに移行することで、コスト削減や業務効率の向上といった多くのメリットがあるのは確かですが、一方で知っておくべきリスクやデメリットも存在します。
時代の潮流に押され慌ててクラウド移行を決行した結果、「ウチに結局クラウドは合わなかった・・・」と苦い思いをすることのないよう、今回はクラウドとオンプレミスの違いを中心として、クラウド移行を適切に判断するためのポイントを徹底解説します。
後半では、クラウド移行の具体的な方法や手順、失敗しないために注意すべきポイントもご紹介していますので、「クラウド移行か?それともオンプレミス継続か?」迷っている企業担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.クラウド移行とは?
クラウド移行とは、企業が保有するデジタル資産(サーバーやアプリケーションなど)を、自社のオンプレミス環境からインターネット上のクラウド環境に移行するプロセスを指します。
従来、企業の社内システムは自社でサーバーやネットワークを構築して運用・維持する必要があり、専門知識・スキルを持った人材の確保や維持管理コストの増加が大きな課題となっていました。
クラウドであれば、専門の事業者にシステムの運用・保守を任せつつ、自分たちは時間や場所を問わず必要なリソースを必要な分だけ利用できることから、コスト削減や業務上の利便性向上を目的として、近年多くの企業がクラウド移行に向けて前向きに検討を進めています。
オンプレミスとは?
オンプレミスとは、通称「オンプレ」とも呼ばれ、自社でサーバーやネットワーク、ソフトウェアなどを構築し、それらの管理・運用もすべて社内で行う仕組みのことです。
ここ十数年でクラウドサービスが急速に普及する前は、オンプレミスでのシステム運用が企業で当たり前に行われていました。
自社でシステムやインフラを1から構築する必要があるため、「導入までに長い時間を要する」「初期費用が高額である」といったデメリットはあるものの、自社運用だからこそカスタマイズ性に優れており、「さまざまな独自機能を自由に追加できる」「セキュリティをより強化できる」という利点があります。
加えて、社内のネットワークを利用するため、「回線の速度や質が安定しやすい」という点もメリットの1つとして挙げられます。
クラウドとは?
クラウド(クラウド・コンピューティング)とは、専門のクラウド事業者が提供するサーバーやネットワーク、ソフトウェアなどのリソースを、インターネット経由で必要な分だけ自由に利用できる仕組みのことです。
カスタマイズ性や通信の安定性はオンプレミスと比べると落ちますが、インターネットに接続できる環境とデバイスがあれば、自前でサーバーやネットワーク機器を用意せずとも、手軽に利用を始められる点が大きな魅力の1つとなっています。
また、システムの運用・保守や障害対応、セキュリティ管理についてもクラウド事業者側がすべて面倒を見てくれるため、運用負荷を大幅に削減できるのも特長です。
なお、クラウドサービスには大きく分けて「SaaS」「PaaS」「IaaS」という3つの形態があり、提供されるサービスの範囲によって違いがあります。
・SaaS(Software as a Service)
インターネット経由でソフトウェアやアプリケーションを利用できる
・PaaS(Platform as a Service)
インターネット経由でアプリケーションの開発・実行に必要な環境を利用できる
・IaaS(Infrastructure as a Service)
インターネット経由でストレージ・CPU・メモリなどのインフラ機能のみ利用できる
┗SaaSの例:Zoom, Slack, Microsoft Teams, Google Meet, Backlog, One Drive, Dropboxなど
┗PaaS/IaaS の例:世界3大クラウド(AWS・Azure・GCP)
オンプレミスとクラウドの比較
オンプレミスとクラウドの違いを表にまとめました。
オンプレミスは初期費用がかさみやすいものの、自社業務に合うように比較的自由にカスタマイズできたり、あらゆる業務システムと柔軟に連携できるといった利点があります。
また、インターネットを経由せず、自社内の閉じられた専用ネットワークを使うため、セキュリティを担保しやすいという特徴もあります。
一方、クラウドはカスタマイズの自由度が低めですが、自前でハードウェア機器などを調達する必要がないため、初期費用を大幅に抑えながらスムーズに利用を開始できます。
維持費用についても、使った分だけ料金を支払う「従量課金制」のため無駄が生じにくく、利用量に合わせてコストを最適化できます。
2.クラウドへ移行するメリット
続いて、クラウドへ移行する8つのメリットについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
・導入ハードルが低い
・コストを抑えられる
・運用負担を軽減できる
・障害発生時の対応を任せられる
・時間や場所を問わず利用できる
・容量の拡張が柔軟に行える
・老朽化の心配がない
・BCP対策として活用できる
導入ハードルが低い
クラウドは、サーバーなどの物理的なITインフラを自社で揃える必要がなく、既にクラウド事業者側が用意しているサービスの中からニーズに合うものを選んで利用するため、手間をかけずに短期間でスピーディーな導入が可能です。
サービスによっては、初期費用ゼロでスタートできるものや、アカウント登録後すぐに使えるものあり、利用開始までの流れはかなりスムーズといえます。
コストを抑えられる
先述の通り、クラウドでは導入時にサーバーや周辺機器などのハードウェア購入・設置は不要なため、初期費用をかなり安く抑えられます。
なお、クラウドサービスの多くは利用量に応じて料金が発生する「従量課金制」を採用しており、必要以上に経費がかかることもありません。
さらに、利用料金に加えて、サーバーを安定的に稼働し続けるためのメンテナンス維持費、電気代やスペース代、運用・監視にかかる人件費なども削減できます。
運用負担を軽減できる
クラウドでは、ソフトウェアやアプリケーションの更新、データ管理、バックアップ作業など、従来は自社で行っていた管理・メンテナンス業務の多くをクラウド事業者に任せられるため、運用担当者の大幅な負担軽減につながります。
システムやインフラの運用・保守に必要な人員が最低限で済むため、企画・開発などのより付加価値の高い業務に貴重な自社人材を割り当てることができます。
障害発生時の対応を任せられる
自社でサーバーを保持していると、万が一障害が起きた場合はすべて社内で復旧作業を行わなければならず、緊急時に備えて24時間の対応体制を用意したり、障害発生時の対応マニュアルを策定したりと、それ相応の対策が必要になります。
クラウドであれば、災害や障害発生時の対応をクラウド事業者に委ねることができるため、自社担当者の負担を大幅に軽減できます。
ただし、障害発生時の対応範囲や復旧時間、補償内容などについては、各クラウド事業者が定めるSLA(Service Level Agreement)によって異なるため、どこまでクラウド事業者が対応してくれるのか、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
時間や場所を問わず利用できる
クラウドは、インターネットに接続できる環境と、PCやタブレット、スマートフォンといったデバイスさえあればいつでもアクセス可能なため、時間や場所、端末の種類を問わず利用できます。
インターネットを通じて社内からでも外部からでもアクセスできることから、リモートワークや在宅勤務の推進にも大きくつながるでしょう。
容量の拡張が柔軟に行える
拡張性に優れている点も、クラウドの大きな特徴の1つです。
オンプレミスで容量を拡張するとなると、新たにハードディスクを増設したり、より容量の大きいサーバーへ引っ越しを行うなど、高額なコストと手間が必要になるため、そう簡単には実現できません。
一方、クラウドならオンライン上で契約内容を変更するだけで、規模やデータ容量などを自由に調節することができます。
容量の拡大はもちろんのこと、不要になればまた元の容量に戻すこともできますし、利用状況に応じてさらに容量を縮小すれば、無駄な出費を必要最低限に抑えられます。
老朽化の心配がない
オンプレミスの場合は物理的なサーバーやネットワーク機器を使用するため、どうしても定期的なメンテナンスや設備の買い替えといった老朽化対策が必要になります。
クラウドに移行すれば、各種システムやインフラの管理はすべてクラウド事業者に一任できることから、老朽化による運用・保守の停止やサポート打ち切りといった心配をする必要はなくなります。
BCP対策として活用できる
クラウドは、BCP(事業継続計画)対策としても有効です。
クラウド事業者は、自然災害に強い立地や構造を備えた複数の拠点にデータセンターを保有し、データの分散保管を行っています。
万が一災害が発生して自社オフィスや設備に被害があったとしても、クラウド上にあるデータは影響を受けないため、事業停止リスクを最小限に抑えることができます。
3.クラウドへ移行するデメリット
一方で、クラウド移行の際に注意しておきたいデメリットもいくつか存在します。
・カスタマイズ性が低い
・既存システムとの連携が難しい場合がある
・クラウド事業者への依存度が高い
カスタマイズ性が低い
クラウドでは、基本的に事業者が提供するサービスをそのまま利用することになるため、自社で自由にカスタマイズすることはできません。
ただし、全くカスタマイズできないというわけではなく、サービスによってはOSやサーバーのスペックなどが数種類用意され、自社に合わせて選べる場合もあります。
それでも、クラウド事業者が提供するサービスの範囲内でしか設定変更を行えないことに変わりはないため、自社独自の環境やシステムを構築したい場合は、クラウド移行には慎重になった方が良いでしょう。
既存システムとの連携が難しい場合がある
クラウド移行のデメリットとして、これまでオンプレミスで運用していた自社独自のシステムとクラウドとの相性が悪く、連携に問題が生じる場合があります。
インターネットを経由する点や、クラウド事業者が用意している決まったサービスを利用する点がネックになって、既存システムとの連携が上手くいかず、クラウド上での運用をスムーズに行えないというケースが多いようです。
クラウド移行の前には、自社システムと移行先のクラウドに互換性があるかどうか入念に調査を行い、もし連携が難しそうとなれば、
・SaaS上のアプリケーションを代替手段として利用する
・クラウドとオンプレミスを共存させる「ハイブリッドクラウド」により、システム同士の連携性を維持する
など、他の方法も検討してみましょう。
クラウド事業者への依存度が高い
クラウドでは、システムの運用・保守や障害対応、セキュリティ管理などをクラウド事業者に一任できるため便利ですが、これは言い換えれば「自社のコントロールが効きにくい」ということでもあります。
クラウドサービスのセキュリティレベルの高さは、各クラウド事業者が持つセキュリティ技術の高さに依存しますし、障害が発生した場合は解消に向けて自社で行えることはほとんどなく、ひたすら復旧を待つほかありません。
多くがクラウド事業者頼りになることで生じるセキュリティリスクや業務・サービス停止リスクを自社で許容できるか、慎重に判断を行う必要があります。
4.クラウド移行を判断するポイント
これまで解説してきたクラウドのメリット・デメリットを踏まえ、クラウドへの移行をおすすめしたい企業と、オンプレミスでの運用を継続すべき企業の特徴をまとめてみます。
クラウドへ移行するべき企業
クラウドへ移行すべき企業の特徴は以下の通りです。
・コストを抑えたい
┗クラウドは、ハードウェアの準備に伴う初期費用が必要なく、維持費用も従量課金制のためコストも最適化できる
・容量の拡縮を手軽に行いたい
┗クラウドは、オンラインで契約内容を変更するだけで容量の拡張が可能であり、使用量に応じて容量の縮小も柔軟にできる
・運用保守や障害対応を行える専門人材がいない
┗クラウドは、システムの管理・メンテナンスや障害発生時の対応をほぼ丸ごと事業者側に任せられる
・リモートワーク導入を進めたい
┗クラウドは、インターネットに接続できる環境と、PC・タブレット・スマートフォンなどの端末さえあれば、場所を問わず社内システムの利用やデータ共有が行える
オンプレミスを継続するべき企業
オンプレミスを継続するべき企業の特徴は以下の通りです。
・自社で自由度高くカスタマイズしたい
┗クラウドでは、オンプレミスほどシステムを独自に細かくカスタマイズすることはできない
・クラウドと自社システムの相性が悪い
┗既存システムによっては、クラウドとの連携が上手くいかない場合がある
・独自のセキュリティ対策を行いたい
┗クラウドのセキュリティ強度は、基本的にクラウド事業者側に依存する
5.サーバーをクラウドへ移行する方法
サーバーをオンプレミスからクラウドに移行する場合、移行方法は主に3種類あります。
P2C(Physical to Cloud)
P2C(Physical to Cloud)は、オンプレミスの物理サーバーを直接クラウド環境に移行する方法です。
物理サーバーにあるデータを仮想マシンへ素早く移行できますが、比較的難易度の高い方法であり、現在はあまり使われていません。
V2C(Virtual to Cloud)
V2C(Virtual to Cloud)は、オンプレミスの仮想サーバーをクラウド環境に移行する方法です。
オンプレミスで動作中の仮想サーバーをそのままクラウドへ移行できるのが特徴です。
P2V2C(Physical to Virtual to Cloud)
P2V2C(Physical to Virtual to Cloud)は、オンプレミスの物理サーバーを仮想サーバーに変換してからクラウドへ移行する方法であり、最も一般的かつ推奨されている方法です。
移行ツールを利用し、まずP2V(Physical to Virtual)で物理サーバーを仮想サーバーへ変換した後、V2Cで仮想サーバーをクラウドへ移行するという2段階の方法を取ります。
6.アプリケーションをクラウドへ移行する方法
アプリケーションをオンプレミスからクラウドに移行する場合、移行方法は主に5種類あります。
これら5つの方法は、米国の調査会社であるガートナーによって分類されているクラウド移行の代表的なアプローチであり、それぞれ英単語の頭文字を取って「5R」と呼ばれます。
リホスト(Rehost)
リホストとは、これまで使っていたアプリケーションを一度そのままクラウドに移行し(=Lift)、そのあとで必要な修正や最適化を行う(=Shift)方法のことです。
アプリケーションのクラウド移行で使われる最もシンプルかつ代表的な手法で、Lift (リフト)& Shift(シフト)とも呼ばれます。
オンプレミスでのシステムはクラウド環境に合わせて最適化しますが、アプリケーションの構成は大きく変わらないため、修正の手間は最小限で済みます。
リファクタリング(Refactoring)
プログラム自体の外部的な挙動はそのままに、内部ソースコードの改善を行ってバグやエラーを修正し無駄な処理を省き、クラウド環境に最適化できるよう再設計した上で移行する方法です。
既存システムのアーキテクチャや仕様はそのままに、コードやデータベースといった内部構造に変更を加えてパフォーマンスを向上させてからクラウドへ移行を行います。
リバイス(Revise)
リバイスは、既存のアプリケーションをベースとして必要な機能を追加・改修し、その後クラウドへと移行する方法です。
既存システムのアーキテクチャを維持しつつも、クラウドへ移行するためにアプリを追加・変更することで、クラウド環境下においてもスムーズかつ効率的にシステムを使えるように改善できます。
リビルド(Rebuild)
リビルドは、クラウドに対応できるようにアプリケーションを1から再構築する方法です。
リファクタリングやリバイスのように改修を加えるのではなく、何もない状態からまったく新しいクラウドベースのアプリケーションを開発します。
ゼロベースからのシステム構築になるため、クラウドに精通した IT 人材が必要であり、一定の開発期間が必要になります。
リプレイス(Replace)
リプレイスは、既存のアプリケーションを破棄し、クラウドベンダーが提供するSaaSなどの各種クラウドサービスへ全面的に置き換えるアプローチです。
最も簡単な方法はSaaS への移行ですが、自社の要件を100 % 満たす SaaS製品が見つかる例は滅多にありません。
そのため、クラウドサービスを自社である程度カスタマイズしたり、他のソフトウェアと連携させて使用したりするケースが今では一般的です。
7.クラウド移行の手順
ここからは、オンプレミスからクラウド環境へ移行する手順について、5つのステップに分けて解説します。
Step1:目標設定
まずは、クラウド移行にあたり明確なゴール・目的を定めましょう。
多くの場合、企業は自社が抱えている何らかのビジネス課題を解決するためにクラウド移行を実施することになるので、課題の内容を踏まえて以下3つの観点から明確な目標設定を行います。
「クラウドのほうがなんとなく使いやすそう」などの漠然とした理由では、後で目的を見失う羽目につながりかねないので、「クラウド化によって何を実現したいのか」しっかりと言語化するようにしましょう。
・「なぜ」クラウド移行するのか
・「何を」クラウド移行するのか
・「いつまでに」クラウド移行するのか
例:来年4月からの全社フルリモートワーク開始に向け、社員が場所を問わず共有ファイルにアクセスできるよう、社内すべてのデータをクラウド上で管理したい。
Step2:現状調査
クラウド移行の目標を設定したら、現行システムの設計や運用状況などを調査し、クラウド移行が適切な手段かどうか、移行の実現可能性があるかどうかを判断します。
移行の対象となりうる社内システムについては、システム情報に加えて利用者の規模や所在、サービス時間、セキュリティ要件などの情報を収集し、自社が求めるパフォーマンスを移行後も同様に発揮できるか、これまで通り既存システムとの連携がスムーズにできるかを確認します。
なお、クラウド移行にあたって検討すべきセキュリティ要件の詳細は、以下の記事をご参考ください。
Step3:移行計画の策定
現状調査が完了したら、次はクラウド移行計画を作成します。いつ、どのデータを、どのように移行するのかを具体的に決めましょう。
移行計画書には、主に次のような事項を盛り込むことになります。
・移行の対象範囲
・移行後の全体システムイメージ
・移行後の運用イメージ
・採用するクラウドサービス
・移行方法
・移行順序
・移行スケジュール
・移行後の確認方法
・移行中と移行後の体制
特に重要なポイントとなるのが、「移行順序」と「スケジュール」です。
複数のシステムをクラウド移行する場合の優先順位は、「業務課題」「影響度」「利用者数」などの観点で評価します。
基本的には、影響度や利用者数が少ないシステムから移行し、この時に得られた移行に際してのさまざまな知見を、今度はより規模の大きなシステムの移行に活かします。
スケジュール設定も、クラウド移行を効率的に進めるためには欠かせません。
特に、大容量のデータを移行する場合は、「データの移行に回線が耐えられるのか」「移行完了までにどれくらい時間がかかるのか」なども加味したスケジュールを組む必要があります。
Step4:作業内容・連絡体制の整理
移行計画を策定した後は、作業内容と連絡体制をまとめておきます。
具体的には、タスクの洗い出し、担当者のアサイン、トラブル発生時における連絡体制の構築、切り戻し(=移行中に問題が発生した場合、作業を中止して元の状態へ戻す)基準やタイミングの設定などを行い、各関係者に共有します。
さらに、不測の事態に備えて追加要員も確保しておくと、万が一の時も迅速に対応できるでしょう。
Step5:移行実施~動作確認
クラウド移行を実施する体制が整ったら、いよいよ作業を開始します。
計画に沿って担当者がそれぞれのタスクをこなし、随時連絡を取り合って進捗状況を共有します。
万が一移行作業中に問題が起きた時は、事前に策定した連絡体制と切り戻し基準・タイミングに従い、速やかに切り戻しを実行します。
作業終了後は一通りの動作確認を行い、何事もなく正常に動くことを確認できたら移行作業は完了となります。
なお、これまで利用してきたサービスの解約は、必ず移行作業が完了したことを確認してから行うようにしましょう。
万が一移行にあたってトラブルが生じた場合、先に解約を済ませてしまっていると、移行前・移行後両方でシステムが使えなくなり、業務に大きな支障が出てしまう可能性があるためです。
8.クラウド移行で失敗しないためには
最後に、せっかくのクラウド移行が失敗に終わらないようにするために注意したいポイントを確認しておきましょう。
社員(利用者)にクラウド移行の目的を伝える
クラウド移行で失敗しないためには、クラウドサービスを導入する目的を明確化し、利用者の社員にその目的を共有して理解を得ておくことが大切です。
新しいシステムを導入した際は、システムの操作性に慣れるまではどうしても業務効率が低下するため、現場には少なからず混乱や不満が生じます。
この時、システムの導入目的やメリットが不明瞭だと、「使い勝手が悪くなった」「手間が増えた」「今まで通りの方が良かった」と不満が膨れ上がり、せっかく新しいクラウドサービスを導入したのに全く使われなくなってしまう可能性があります。
そのため、「なぜクラウド移行するのか」「クラウド移行によってどんなメリットがあるのか」を社員に対して事前に共有しておき、移行後はクラウドを使いこなすための社員教育・トレーニング期間を設けておくと、移行後の混乱を最小限に抑えられて、社員の士気や業務効率も上がりやすくなるでしょう。
入念なコストシミュレーションを行う
クラウドへ移行する前に、コストを正しく見積もっておくことが重要です。
ほとんどのクラウドサービスは従量課金制で、使った分だけ料金を支払うシステムとなっていますが、利用形態によっては移行前よりも費用が高くなってしまう可能性があるため、運用時に想定外のコストが発生しないよう、毎月発生する料金のシミュレーションは入念に行っておくと良いでしょう。
自社に合うクラウドサービスを見極める
クラウド移行を成功させるなら、「自社の業務に適合するか」を意識してサービスの選定を行うことが大切です。
自社の環境や業務フローに合わないクラウドサービスを導入した場合、システム同士の連携が上手くいかなかったり、自社で使わない機能が多すぎたり、操作性が低かったりして、現場でシステムを十分に使いこなせない可能性があります。
利用料金や実績だけでなく、サポートの手厚さ・セキュリティの体制・拡張性の高さ・既存システムとの相性・連携のしやすさなど、総合的に判断した上で最適なクラウドサービスを選定しましょう。
10.クラウド移行に関するご相談は、ぜひコンピュータマネジメントへ
いかがでしたでしょうか?
クラウド移行を進めるべきか、それともオンプレミスを続行すべきか、自社にとって最適な方法を見定めるためには、クラウドの特徴やメリット・デメリット、オンプレミスとの違いをしっかりと把握したうえで、
- なぜクラウド移行が必要なのか
- クラウド移行によってどのような課題を解消したいのか
を明らかにすることが必要不可欠です。
「そもそも自社は本当にクラウド化すべき?」
「どのクラウドサービスが自社に最もマッチしているの?」
「クラウドにかかるコストを最適化する方法は?」
「クラウドのセキュリティは本当に大丈夫?」
・・・など、クラウド移行に際して不安なことや疑問点がございましたら、ぜひ一度当社コンピュータマネジメントへお気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
Y.M(マーケティング室)
2020年に株式会社コンピュータマネジメントに新卒入社。
CPサイトのリニューアルに携わりつつ、会社としては初のブログを創設した。
現在は「情シス支援」をテーマに、月3本ペースでブログ更新を継続中。